「弁護士の質」についての実証研究:若い弁護士の方が質が高い?
太田勝造「民事弁護の質:弁護士による評価」日弁連法務研究財団編『法と実務11』(商事法務2015)より
英国カーディフ大学ロー・スクールのRichard Moorhead等による研究:Moorhead, et al.(2001),Moorhead, et al.(2004:1-2,53-54)にヒントを受けて、東京大学大学院法学政治学研究科教授である太田勝造が行った実証研究の紹介。
のべ95人の熟練の弁護士に、1件につき2人で独立に、計191件の記録での弁護士のパフォーマンスを、評価した。
その評価項目は、
①訴状・答弁書の内容量
②法律構成・論理性
③説得力
④文章力・表現力
⑤法的知識
⑥事実関係の把握度
⑦相手方の主張立証に対する反応の良さ
⑧要を得た立証活動
⑨主尋問の量
⑩主尋問のための準備の程度
⑪主尋問の技法
⑫反対尋問の技法
⑬全体的な貢献度
⑭全体的な能力
すると…
弁護士の修習期が大きいほど、民事弁護の質は高くなるとのデータが得られた。
らしい。
若い弁護士の方が訴訟のパフォーマンスが高い!?という謎の結果。
こちらがその相関関係を示した図。
図は冒頭の論文から引用
太田は、その理由について、
①経験が短いほど手持ち事件が少なく、1件に避ける時間と労力と情熱が多い
②司法試験の勉強の成果により法的知識が新鮮
③手抜きの方法をマスターしていない
などの仮説が考えられるが、それは今後の研究課題であるとしている。
まあ、訴訟の記録だけをみればそういうこともあるのかなあ。
いずれにせよ、こういう実証研究がどんどん増えることで、弁護士全体の仕事の質を向上させるインセンティブが生まれたり、改善のポイントをしることができるようになったりすればいいな。
【追記】
「法と実務」最新号に載ってる太田勝造教授の「弁護士の質」に関する実証研究の対象って59期までで、一番評価の高いのは50期代後半ですよね。この世代ってロースクール出てない、予備校式の勉強だけで合格したとされている世代(だからロースクール作らなあかん!という論拠)ですよね。
— 中村元弥 (@1961kumachin) 2015, 5月 15
ロー卒は60期からだから、59期までを調査対象にしてる実証分析では、ロー卒弁護士の質の低下は分からないわけか。
— ゆりすときのこ™ (@jurist_kinoko) 2015, 5月 15